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維嶋津 Lovely fairy with me

 思いっきりネタバレしていくのでまだ読んでない人は帰ってくれ!
 今回レビューする維嶋津氏の作品は雑な説明をすると““謎の死を遂げた親友が直前までやっていたゲームを主人公自身もプレイし親友の死に迫っていく””という内容。ただ、冒頭ですでに主人公はゲームの魔力に取り憑かれたのか外界との交信を断ち後に語られる友人と同じ末路……つまりミイラ取りがミイラになるわけだ。
 物語は主人公の哀れな末路に向かって進んでいく。突然の友人の死からはじまり次の展開への合間に主人公と友人の過去の思い出が入る。友人を殺したゲームに嫌悪しつつも魅力に染まっていく主人公。友人の死の真相に近づくにつれて主人公も自分の死へと近づいていく。
 冒頭でこんなに不安にさせるんだ面白いに決まっている。だからぼくはぶちギレている。おまえなにやってるの?

 今回評価するとしたらこの作品は““読者を引き込むのに十分な設定、構成力がある。物語が近年のトレンドであるソーシャルゲームを中心に進んでいくので読者も感情移入しやすい。しかしながら脚本能力は不足している。ここを直さなければファンの定着は難しいだろう””と作者に送りつけるだろう。
 作品を尻すぼみにした原因を列挙するとこれらがあげられる。

・結末とそれにつながる流れがお粗末過ぎて説得力がない。特に友人の死に疑問が残る
・読者(僕)が予想していた結末とあまりにも駆け離れすぎていた
・伏線が生かしきれておらず最後に種明かしをされたものの腑に落ちない。またその伏線が突飛すぎて現実味がない


 少なくとも僕は冒頭の雰囲気でSF(サイエンスフィクション)+社会派小説としてこの本を読んでいた。後半までは本当にそうだと思っていた。しかし最後の最後にこれはフィクションではなくファンタジーであったと感じた。高級フレンチを食ってて最後のデザートにコッテコテのトンコツラーメンを出されたと言えばわかってくれるだろう。最後の最後で雰囲気をぶち壊しに来たのだ。そういう作品だ。なにをやっているんだ君は。


 ここから列挙していった問題点を解説していく。

・結末とそれにつながる流れがお粗末過ぎて説得力がない。特に友人の死に疑問が残る
 結末は主人公の死である。それに向かって物語は進んでいく。ゴールデンウィークの帰省中に友人の死を知らされた主人公。友人の実家に挨拶に行くと「息子はソーシャルゲームが原因で死んだのかもしれない」と遺族に聞かされる。友人の死の真相を知るために同じソーシャルゲームを始めその魅力にはまっていく主人公。ソーシャルゲームがきっかけで出会った八千留という男から生前友人は「ベル」というキャラクターに入れ込みベルのために仕事をやめてそして最後には死を選ぶ。友人はなぜベルというキャラクターに入れ込んだのか?それは友人の過去とキャラクターの設定が類似しており友人はベルに親近感を覚えたからだろうと推測する。 しかし友人はいわゆる一般的なアニメオタクのイメージとはかけ離れており不良上がりであるが家族に迷惑をかけないようにと高校卒業と同時に働くしっかりものだ。そんなやつがいくらソーシャルゲームに、そのキャラクターに入れ込んでいるからって会社をやめてまで、死ぬ直前までソーシャルゲームをやっていたなどいまだに信じられない。東京に戻るときにソーシャルゲームのキャラクターに呟いた「友達が死んだら、お前はどうする?」という問いに対してテンプレ台詞の後に放った「もしかすると、ベルなら何か知ってるかも」という2度と再現されなかった返事。動き出す物語。
 ここまで読んで僕自身物凄くわくわくしていた。結末は知っている。だが、この乗り物どのような道順を辿って死という駅に着くのか。まさかここから““主人公がただの痛いメンヘラストーカーに成り果てそれが原因で住所が特定された挙げ句仕事もやめさせられそうになる。非通知でかかってきた電話から××に来いという命令をされてノコノコいったらボッコボコにされたけど謎の現象が起きて暴力ストップそのあと救出されたあともうどうでも良くなってソシャゲのキャラと心中する””とかいう謎結末になるのか?責任者出てこい。

・読者(僕)が予想していた結末とあまりにも駆け離れすぎていた
「衝撃のラスト」「予測不可能な展開」を宣伝文句にしている作品は多数ある。もちろん先が読める話はつまらないだろう。ただ、この作品の肝は主人公の死に繋がっていく途中の話を読者に読ませることにあったのではないか?
 読者に見えている確実、回避不可能な主人公の死。なぜミイラ取りがミイラになってしまったのか。主人公の過去の回想はソシャゲに嵌まってしまう原因、因子をぽつりぽつりと小出しにしていきそれが死へと繋げるための伏線だと思っていた。関係なかった!
 ソシャゲ狂いになって廃課金者ルートかと思ったら人生クソゲーおれやめピ!wwwwwってそりゃないでしょ……

・伏線が生かしきれておらず最後に種明かしをされたものの腑に落ちない。またその伏線が突飛すぎて現実味がない

 最後の最後にAIについて触れられている。今回の事件はAIも一枚噛んでるよ!ということなのだろうか。よくそんなこと言えたな。雑すぎる。あそこまで丁寧に書いておきながらなぜ最後の最後にとんでもない方向からとんでもない爆弾が飛んでくるのか。どうすればいいのかわからなすぎる。
 本当になぜこうなったのか。別の人間が書いたのではないかと思わせるくらい雑である。あえて伏線と書いたが伏線にもなっていない。


 他にも突っ込みたい箇所はいっぱいある。それは各人に突っ込ませてあげたい。あえてぼくが言わなくても絶対に疑問に残る致命的で決定的に作品の印象を変えてしまった部分だ。ぼくはそれを皮肉と怒りと中傷を込めて““山田悠介的だ””と表現しよう。山田悠介的な展開がダメという意味ではない。ぼくが言いたいのはなぜここまで丁寧に積み上げて来た作品の雰囲気を一番持っていっちゃいけない空気に変えたのかということだ。
 山田悠介の作品を読んだことのある人ならわかるはずだ。非現実的な雰囲気の世界であるということを。そしてこの作品に持ってきちゃいけない空気ということを。


 今回の件は本当に残念だ。ただ、本当はこれは長編であり修正と添削の結果この文量に抑えたという話を聞いている。もしかしたら本当はまったく別の展開だったのかもしれない。そう信じたい。